- 発売日: 2013/11/26
- メディア: Prime Video
- この商品を含むブログを見る
DVDで。重厚な語り口の、ずっしりとした、暗い映画。貧民街で育ったジミー、ショーン、デイヴの3人は11歳。近所の遊び仲間だった。だがあるとき、3人で遊んでいる最中にデイヴが誘拐、監禁されてしまい、性的虐待を受けることに。そしてそれから25年後、殺人事件が発生し、再び3人は邂逅することになる。ジミーは娘を殺された被害者として、ショーンは殺人課の刑事として、デイヴは容疑者として…!
物語冒頭で子供のころの3人がおかれた状況は、最後まで変わることはない。となると、子供のころに受けた傷がその後の人生すべてに影を落とすこと、過去がいつまでも追ってくるっていうことの恐ろしさ、やるせなさこそがふつうは作品の中心主題になってくるはずだろう。けれど、この映画ではデイヴの負った傷の描き方に重さが足りないために、トラウマものサスペンスとしてはどこか腑に落ちない印象の、中途半端なものになってしまっている。物語の最後までどのような高揚感が感じられることもなく、おまけに後味はむちゃくちゃ悪い。
だから、この映画はサスペンスドラマっていうよりは、もうほんとに政治的メタファーとして見るべきなのかもしれない。物語の終盤、デイヴが理不尽すぎる運命を辿るあたりから最後までの展開は、おもいっきりイラク戦争への皮肉になっていると言っていいだろうし、そうかんがえたほうがずっとおもしろい。己の信念、己のルールにのみ従って生き、自らの正義のためには暴力の行使をも厭わないジミーはアメリカそのものを、警察でありながら最終的にジミーの行為を実質的に許容してしまうショーンは無力な国連を、また、過去に虐待を受け、後にもさらなる暴力によって抹殺されることになるデイヴはイラクを、それぞれ表象している。その表象のなされ方はかなりあからさまで、ストーリーの大筋にも作品の細部にも、政治的皮肉が満ち満ちている。
劇的なカタルシスがあるわけじゃないから、物語として地味ではあるんだけど、俳優たちの演技やシーンのつくり方はとてもていねいで、完成度の高い作品だと感じた。三者三様の心象を描き出して、観客にとにかく不快感を感じさせようっていうような物語ラストのパレードのシーンは圧巻で、正直かなりすごいとおもったし。全くすきになれる作品じゃないけど、見ていて何度も感心させられちゃった気がするなー。