映画前半ではまずさまざまな復讐の原因となる物語が語られ、後半に入ると壮絶な復讐劇の連鎖が怒涛の勢いで進行していく。俳優たちの演技はすばらしく、抑制されるべきところはきちんと抑制されていて、暴力的なシークエンスとの対比が際立ちまくっていた。ただ、俺はバイオレンスな描写がわりと苦手なので、そういう痛いシーンになると頭の中で「うわー痛そうー」「まじそれやっちゃうのー?」とか余計なつっこみを入れて一歩引いてしまうようになるので、それで作品世界にあまり入り込まずに見てしまった感はある。
あと、登場人物たちのキャラクターや状況の設定はちょっと紋切り型なように感じた。とはいえ、そういうキャラクターや状況のわかりやすさが作品のもつ衝撃を強めている、とは言えるかなともおもった。誰もが被害者であると同時に加害者でもある。その状況のやりきれなさがこの映画の深みに繋がっているのだけれど、彼らを復讐に駆りたてた原因とは、辿っていけばある状況(生まれつきの障害や社会構造)に還元しうるものであるかもしれない。とかんがえてしまうと、その分だけそのやりきれなさが安っぽいものになってしまう気がする。いや、そうじゃないのか。そうじゃなくて、その安っぽさこそが余計やりきれないのかもしれない。