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『読書の技法 誰でも本物の知識が身につく熟読術・速読術「超」入門』/佐藤優

読書の技法 誰でも本物の知識が身につく熟読術・速読術「超」入門

読書の技法 誰でも本物の知識が身につく熟読術・速読術「超」入門

佐藤優による、読書術本。佐藤は毎月およそ300冊(!)、多いときには500冊(!!)ほどの本に目を通しているのだという。ただし、そのうちで「熟読」しているのは、4、5冊のみ。その他の本については、「速読」もしくは「超速読」にて対応している、ということらしい。本書では、そういった佐藤流の読書メソッドや、基礎知識の身につけ方なんかについて整理がなされている。

佐藤曰く、読書術とは、知の技法のもっとも基礎の部分にあたるものだという。

なぜ、読書術が知の技法のいちばん初めに位置づけられなくてはならないのだろうか。
それは、人間が死を運命づけられている存在だからだ。そのために、時間が人間にとって最大の制約条件になる。少し難しい言い方をすると、人間は、制約の中で、無限の可能性と不可能性を同時に持って生きている。(p.3)

人に与えられている時間は有限なのだから、効率よく知識を得ていかなくちゃね、そのために読書が有益なのは自明だけれど、でもやっぱり、必要に応じて本の読み方を変えていく必要があるよね、って話だ。以下、佐藤が紹介している3種類の読書法について、簡単にメモをとっておく。

熟読法

基本書(ある分野の基礎知識を得るための、基本文献)を読むときに用いられるのが、熟読法。これはちょっとハードな本を読んだことのある人なら、おおよそ実践しているような方法なんじゃないだろうか。同じ本を3回読む。

第一読では、重要とおもわれる箇所、よくわからないが重要そうな気がする箇所などに線を引きながら、全体を通読する。このときに大切なのは、仮読みのような手法で漫然と読まないようにする、ということ。(一度ざっくりとした読みをしてしまうと、その後、重要事項がきちんと頭に入りにくくなってしまうため。)

第二読では、一読目に線を引いた部分から、とくに重要とおもわれる部分を四角く囲っていく。囲みの量は、どんなに多くてもテキスト全体の10分の1程度に留めておくようにする。そして、この囲みの部分をノートに書き写し、欄外に「わからない」とか、「○○の言説と対立」などといった書き込みをしていく。これが記憶を定着させ、理解を深めるコツというわけだ。

第三読では、まず目次の構成をよく頭に叩き込んだ上で、もう一度全体を通読する。このとき、結論部を3回読んで、著者の主張への理解を確かなものにするようにする。

超速読法

超速読においてとくに重要なのは、1冊を超速読するのに5分以上はかけない、と自分自身に誓ってしまうこと。たったの5分で1冊を処理しようというわけだから、当然、できることはごく限られたものになってくる。

まず序文の最初の1ページと目次を読み、それ以降はひたすらページをめくっていく。このとき、文字をじっくり読んだりはしないし、原則として、一行一行線を引くこともしない。ただし、気になる箇所や語句が見つかった場合は、後で分かるように鉛筆なり付箋なりドッグイアなりで印をつけておくようにする。本を最後までめくり終えたら、結論部のいちばん最後のページを読む。これで本全体の印象をつかむと同時に、その本で自分が読むべき箇所の"あたり"をつける。

要は、超速読というのは、「この本が自分にとって有益かどうか、時間をかけて読むに値するかどうか」をすばやく判別するための作業というわけだ。だからもちろん、当該分野の基礎知識を持っていない場合は、この方法を適用することはできないし、この方法で本の内容をしっかり頭に叩き込むことなんかも、できはしないだろう。

速読法

「普通の速読」とは、400ページ程度の一般書や学術書を30分程度で読む技法である。 その後、30分程度かけて読書ノートを作成すれば、着実に知識を蓄積することができる。ちょっと訓練を詰めば、普通のビジネスパーソンが2~3日かけて行う読書を、わずか1時間程度で行うことができるようになる。普通の速読ができるようになれば、読書術は完成したと言ってよい。(p.76)

お~、これはすごい!ぜひ身につけたい!っておもわされるのが、速読法だ。ただやっぱり、これがいちばんむずかしいらしい。

原則としてもっとも大事なのは、超速読と同じく、当該分野の基礎知識がじゅうぶんにあることなのだけれど、速読においてその次に重要なのは、本の内容を完璧に理解しようという完璧主義を捨てること、なのだという。つまり、速読は、「あくまでも熟読する本を選別するための作業」であるという認識を持つこと。速読が熟読よりも効果を上げることはあり得ないのだから、ここでむだに時間をかけてしまわないよう注意すべし、というわけだ。

まず、目次とまえがきを注意深く読み、それから結びの部分を読む。そこで得られた情報から、自分に役立ちそうな記述がどの章に記載されているかのあたりをつけ、該当する章を端から文字を追って読んでいく。その後、残った時間でそれ以外のページを超速読してしまう。このとき、内容に引っかかって同じ行を何度も読み返してしまう、という時間のロスをなくすため、一行一行、定規を当てながら速読するのもよい。1ページ15秒程度で読めれば理想的。重要とおもわれる箇所には、いつものように、鉛筆や付箋で印をつけておく。

イメージとしては、新聞の読み方の応用という感じ、と佐藤は書いている。30分で一冊を処理するのがひとつの目標だけれど、本によっては1冊に2,3時間かけてもOK。まずは自分の仕事に関する分野の新書やビジネス書、一般書を選び、30分、1時間という枠を設けて始めてみるのがよいだろう、とのこと。