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『応答せよ巨大ロボット、ジェノバ』/杉作J太郎

サヨウナラJ文学、
そして今、J太郎文学

坪内祐三の推薦文が書かれた帯(↑)が衝撃的な本作だけど、これはなんていうかもう、ほんとにかなりしょうもない小説!なにしろ、J太郎氏本人がモデルとおぼしき40がらみのおっさん(元・プロレス実況解説者)が、宇宙人の侵略から地球を守るための地下組織に入り、最終的には巨大ロボットに乗り込むことになる、ってのがメインプロットなのだ。その流れのなかで、巨乳でアニメ声のグラビアアイドルやら、落ち目のプロレス団体やら、おっさんのオナペットやら、迫りくる死の予感やらが代わる代わるに描かれていき、やがておっさんは自分の物語を見出していくことになるのだが…!って、まあとにかくとってもふざけたごった煮のストーリーなのだけど、ふざけてしょうもないがゆえの切実さみたいなものもたしかにあったりして、なかなか油断できない作品に仕上がってしまっている。

物語、ファンタジーとは、現実を生き抜くための装置だと俺はおもっているのだけど、本作の主人公たるおっさんにとっても、やはり物語は生きるよすがであり、自らの生に意味を付与するほとんど唯一の存在となっている。物語はばかばかしいが、我々が本当に追い詰められたときに頼ることができるのはせいぜいそんなものでしかない。J太郎文学で取り扱われているのは、そんなばかばかしさにまつわる悲喜劇だと言えるだろう。

斬新なところ、はっとさせられるようなところがある訳ではないのだけど、書くべきことはここにじゅうぶんに書かれている、という感じがしなくもない一冊だった。鬱屈したすべての男子のための、たしかにこれは文学足り得ている…のかもしれない。

酔った。
久しぶりの酒に酔った。
たまらなく誰かと話したいと思った。何でもいいから話したい。なにを話そう。
山並はポケットの中の携帯電話を握りしめた。だが電話をする相手がいない。地球外からの攻撃で人類は危機に直面しようとしている。人はいま、誰か頼れる人と身を寄せ合っているのだろう。
家族もない。
妻も子供もいない。
ともだちもいない。
山並みはいまひとり、ここにいて、連絡する先がひとつもない。(p.218)