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青葉市子@原宿Vacant

きょうも、3月に見たライブの話。

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3/18、しっとりとした小雨の降る日曜日に、原宿のVacantにて青葉市子の独奏会。Vacantはログハウスのロフトみたいな雰囲気の会場で、木のぬくもりと薄暗がりのなかのオレンジ色の光がやさしい、おしゃれ感のあるちょっと素敵な場所だった。ただ、会場はまったく平坦なフロアだったので、ざぶとんつきの長椅子にに腰掛けると、前の人の頭でステージが致命的に見えにくくなってしまう、というのがちょっとつらいところ。あと、クッションじゃなくてあくまでもざぶとんなので、長いあいだ座っていると尻が痛くなってくる。うしろの方には椅子やソファもあったから、そっちに座ったほうが快適だったのかもしれない。

背中まであるたっぷりした黒髪に白のワンピース、ふわふわゆったりとした動作の青葉市子は、会場の薄暗さと相まって、ちょっと巫女みたいな幽玄な雰囲気を漂わせた女の子だった。とはいえ、ギターを爪弾く右手の動きは非常に安定していて、ときに鋭角的ですらある。歌われる曲も、いっけん眠たげで、雰囲気ものっぽいところがあるようにおもえるものの、じつはかなり複雑な構成の曲が多いし、随所に意外なリズム変化や転調が織り交ぜられていて、何度もはっとさせられる。穏やかななかにも常に緊張感があり、まろやかさのなかにも刺がある。ただ、その緊張感や刺といったものは、聴き手に緊張を強いるために、あるいは曲を盛り上げるために、いかにも狙いすました、という感じがまるでせず、ごく自然に発生して、無理なく音楽の全体に融け合っているようにおもえて。青葉はギターも歌もとても上手いのだけど、そこが何より素晴らしいなーとおもった。

"日時計"、"機械仕掛乃宇宙"、"IMPERIAL SMOKE TOWN"といったヘヴィでひりひりとした曲の合間に歌われた、"三匹のくま"や"おもいでカフェ"の軽やかさにはぐっときたし、あそびでラルクの"HONEY"をボサノバ風味にカバー、なんておちゃめなところもよかった。そうして、ラストの"ひかりのふるさと"、"奇跡はいつでも"では、白くてまろやかで暖かい、ふんわりとした繭に包まれたような心地にさせられてしまって。この人の音楽をこれから何度も聴きに行きたい、とおもわされてしまったライブだった。

以下、セットリスト。

不和リン
腸髪のサーカス
レースの向こう
日時計
三匹のくま
繙く風
(休憩)
おもいでカフェ
HALFWAY
HONEY
機械仕掛乃宇宙
IMPERIAL SMOKE TOWN
重たい睫毛
ひかりのふるさと
(アンコール)
奇跡はいつでも

うたびこ

うたびこ