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『人のセックスを笑うな』

人のセックスを笑うな [DVD]

人のセックスを笑うな [DVD]

DVDで。山崎ナオコーラ原作の、ちょっとおしゃれな雰囲気の恋愛映画。この映画が狙っているのは、ふつうっぽい恋愛の話のなかでうまいことおしゃれ感を出すことであり、と同時に恋愛におけるある種のリアリティを表現することだろうとおもいつつ見ていたのだけど、それにはきっちりと成功しているな、と感じた。ただ、ほんとうにそれだけの作品であって、それ以上のもの、それ以外のものっていうのはほとんど何もない。主役3人のキャスティングは豪華で、それだけでも価値があるって言えそうな気もするけど、正直、このキャストでなかったらぜんぜんもたなかったかも…とおもったりはした。

カメラを固定した長回しのシーンがとにかく多いのがこの作品の特徴だとおもうのだけど、それが映画っぽい実在感を生むのと同時に、作品全体を明らかに冗長にしてもいる。長回しならではのおもしろさはたしかにあるのだけど、でもそのおもしろさは物語の要請に沿ったものでもなければ、登場人物の心情と組み合わせることで新たな輝きを見せるものといった感じでもなく、ただ単にその場面場面におもしろいアイデアを投入してみただけ、というような印象を受けてしまった。

永作博美はキュートだし、蒼井優の演技もいい。松山ケンイチの行動なんかも、共感したり自分の過去を振り返っては苦笑いしたくなったりしてしまう。でも全体としては、物語をぐいぐいと引っ張っていくような牽引力を感じられない作品で、それは少し残念だった(ポジティブな言い方をするなら、無心でぼうっと見るぶんにはすごく心地いい映画だとおもった)。おしゃれ感とリアリティとドラマ性、その3つを絶妙なバランスでミックスするのって、ほんとうに難しいんだなーなんておもわされたのだった。