- 作者: レイモンドカーヴァー,Raymond Carver,村上春樹
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2007/01/01
- メディア: 単行本
- 購入: 3人 クリック: 14回
- この商品を含むブログ (23件) を見る
オレンジの光に照らされたカウンター席で、食後の一服。何よりも気持ちを落ち着けてくれるハイライトを吸いながら、レイモンド・カーヴァーの詩集、『水と水とが出会うところ』を取り出して、痺れた頭のまま読んでいると、こんなラインに出くわして、俺はなんだか泣きたくなってしまった。
日当たりのいいハーバーに入って、みんなでわいわいやるというのがいいね。
ただただ盛大に楽しくやろう。詰らないことは考えないでね。
誰かを出し抜いたり誰かに置いていかれたり、とかそんなことは。
釣りをしたくなった人のためには釣り竿もあるぞ。魚はいくらでもいるよ!
僕らはヨットを少し外に出して走らせてみることもできる。
でも危ないことなんてないし、目の色を変えることもない。
愉快にやるのがいちばん、ひやひやしたくはない。
僕のヨットの上で、僕らは食べ、飲み、そして大笑いする。
僕はいつも思っていた。こんな航海を一度でいいからやってみたいなと。
友人たちと、僕のヨットで。(p.96「僕のヨット」)
幸せのイメージや穏やかさへの憧憬のような、でもそこにはきっと決して届かないとしっている諦念のような、だからこそ書かずにいられない諦めの悪さのような、ごちゃごちゃしたおもいが素敵なヨットに詰め込まれていく感じがする。ねえ、ヨットなんて本当はないんだよ、なんて台詞はここではぜんぜんお呼びじゃない。なぜって、そんなのはもう、誰だってわかっていることなんだから。