- 出版社/メーカー: 角川エンタテインメント
- 発売日: 2008/07/04
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主人公はある日突然、全身が麻痺してしまう奇病にかかり、動かせるのは左目オンリー、って状態に陥ってしまう。そんな、いったいどう耐えていけばよいのか想像もつかないようなきわめて厳しい状況のなか、彼は左目のまばたきを使った意志表示により、自伝を書き上げることに成功するのだった…!って物語の筋だけからすると、あーいわゆる難病もの、っておもえてくるかもだけど、全編通してとても静謐な映画になっていて、世に溢れるお涙頂戴ムービー的ななニュアンスはほとんどないと言っていい。
まばたきだけで本を書く。そんなすご過ぎることを可能にしたのは、主人公の精神的、そして社会的な能力の高さだと言っていいだろう。なんていうか、過酷な闘病生活に相対する上でいちばんにたいせつなのは心の強さなのかもしれないけれど、そういうのってやっぱりその人の支えとなるような周囲の充実っぷりがあってこそなんだ、ってことをものすごく感じさせられた。主人公はもともとELLEの編集長だったのであって、その社会的地位はばっちり高いし、きっと金だって十分にある。それでこそのあの医師たち、言語聴覚士たちのすばらしくていねいな応対があるわけだ。それに、まばたきだけで本を書く、なんて芸当は、病気以前にしっかりとした文学的蓄積があったことで可能になったことだと言えるんじゃないか。
たしかに奇跡的な物語ではあるけれど、それ以上にリアリスティックなところで響くものがあった気がする。ものすごく感動するとか泣けるとか言うより、まじめで誠実な映画だとおもった。