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『私が、生きる肌』

早稲田松竹にて。人工皮膚開発の権威である形成外科医のロベルは、己の持てる技術のすべてを注ぎ込み、亡くなった妻に瓜二つの美女を作り上げた。ベラと名づけられた彼女は、奇妙な肌色の全身タイツを身につけた状態でロベルの自宅の一室に軟禁されており、その生活のすべてを隠しカメラによって監視されている。ロベルの屋敷に暮らしているのは、ロベルとベラ、そして家政婦である老婆、マリリアの3人のみ。その生活は明らかに異様でありながらも、静かで、奇妙な形で安定している。だが、ある日、マリリアの放蕩息子、セカが屋敷にやって来ることで平穏は破られ、3人はそれぞれが過去に犯した過ちに対峙せざるを得なくなる…!

性的倒錯とそれに関連した犯罪、っていう意味ではいつも通りのアルモドバルだとはいえ、今作における突き抜けちゃってる感はすごすぎる。ストーリーについて言及するとすぐにネタバレに突き当たってしまうので、ここでは詳細は書かないでおくけれど、愛と憎しみと欲望と、それに対する尋常でない執着心とがひとつ釜のなかでごたまぜにされていくようす、そして、SとMの役割がどこまでも絡まり合いながらいつしか反転していくような展開は、もうはっきり言って、完全に予想範囲外のものだった。

登場人物に感情移入できるような作品ではまったくないし、物語も壮絶とか悲劇的いうよりはほとんどギャグみたいにぶっ飛んでいるのだけれど、各シーンの画づくりや流れる音楽は非常にクールでおしゃれ。冗談のようでいて、でもきっとこれはほとんど完全に本気なのだろうとおもわせられる、なんともクレイジーとしか言いようのない映画だった。