- 作者: デヴィッドハーヴェイ,David Harvey,渡辺治,森田成也,木下ちがや,大屋定晴,中村好孝
- 出版社/メーカー: 作品社
- 発売日: 2007/02/01
- メディア: 単行本
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本書において主に語られるのは、新自由主義発生の素因と、それがどのようにしてこれほどまでに徹底的に世界中に拡散し増殖していったのか、ということに関する政治経済史である。もはや今日ではすっかりコモンセンスと一体化してしまっているかのようにおもわれる新自由主義だけれど、いったいいつ政治的な方向転換があったのか?どのような経緯で受け入れられていったのか?そしてそれは、なぜこれほどまでにわれわれの思考様式に深く根を下ろす、支配的な言説となり得たのか?これらの疑問にひとつひとつ答える形で分析を行い、これまでの流れを批判的に検証し直すことによって、政治・経済的なオルタナティブを構築していく足がかりとしていきましょう、というのがハーヴェイのスタンスだといえるだろう。
そもそも、新自由主義とは何なのか?ハーヴェイはひとことで簡単にまとめてみせる。
新自由主義とは何よりも、強力な私的所有権、自由市場、自由貿易を特徴とする制度的枠組みの範囲内で個々人の企業活動の自由とその能力とが無制約に発揮されることによって人類の富と福利が最も増大する、と主張する政治経済的実践の理論である。(p.10)
新自由主義は、市場での交換を「それ自体が倫理であり、人々のすべての行動を導く能力をもち、これまで抱かれていたすべての倫理的信念に置きかわる」ものと評価し、市場における契約関係の重要性を強調する。それは、市場取引の範囲と頻度を最大化することで社会材は最大化されるという考え方であり、人々のすべての行動を市場の領域に導こうとする。(p.12)
市場の自由、商取引の自由こそが個人の自由を基礎づけるものであり、それらの保証こそが、すべての人間の最大の利益を担保するものとなるだろう、というわけだ。
では、そんな新自由主義への政治的移行とは、なぜ、どのようにして発生したのか?また、それをグローバル資本主義の内部で支配的なものにした力とは、いったい何だったのか?次回は、その辺りについてまとめてみようとおもう。