- 作者: 高城剛
- 発売日: 2014/04/21
- メディア: Kindle版
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他人の持ちものや、愛用の道具について聞かせてもらうのはおもしろい。それはきっと、彼/彼女がそのモノを選択するに至った、その人なりの理屈や思い入れといったもののなかから、その人ならではの性格や嗜好や生活信条といったものを見出すことができるようにおもわれるからだ。だから、そのおもしろさというやつは、他人の批評や感想を聞かせてもらうことのおもしろさ、あるいは、他人の日記やブログを読むことのおもしろさにも、ちょっと似ている。
本書は、ぶっとんだライフスタイルでおなじみの高城剛が、海外をあちこち飛び回る放浪生活を営んでいく上で、これだけはどうしても外せない!と選びに選び抜いたグッズの、コメントつきカタログといった趣の一冊だ。高城の生き方は大抵の人にとってきわめて特殊に感じられるようなものだし、ここで紹介されている道具たちもなかなか独特なものが多いようにおもえるけれど、この本のおもしろさというのもやはり、グッズ紹介のなかから、高城自身の人生に対するかんがえ方や、世界に対する向き合い方といったものが浮き彫りになってくるように感じられるところだと言えるだろう(グッズのなかには、もちろん、彼のトレードマークたる「半ズボンスーツ」も含まれている)。
高城は、こんな風に書いている。
今から5年ほど前、自分の持ち物の99%を処分しました。明確な理由はありませんでしたが、長年住んだ渋谷や原宿がつまらなくなってしまったことが、ひとつのきっかけだったと思います。(p.2)
未来の見えない消費社会は、よいエンディングを迎えないだろうとも感じていました。自分の身の回りを見ても、履かないコレクタブルなスニーカー、必要のないフィギュアやガジェットが山積みになり、当時、神宮前にあった60畳を越える家の隅々まで埋め尽くしていたのです。それはまるで「20世紀の残骸」のようでした。
そこで僕は、「モノ」を辞め、資本主義世界最大の街である「東京」を辞め、もう一度、放浪者に戻ることが次の時代を見極める術になると考え、まず、自分の持ち物の90%を一気に処分したのです。(p.2,3)
先日のエントリでは、作家のポール・オースターが25年も同じタイプライターを使い続けている話を取り上げたけれど、本書で扱われているのは、オースターのようなメンタリティのほとんど真逆を行くような、効率化と洗練を極めるためのライフスタイルだと言えるかもしれない。断捨離とかなんとか言っても、ここまで極端にやれる人はそうそういないだろう。「持ち物の99%を処分」なんて、ふつうはおもいつかないし、おもいついても実行できるようなことじゃない。そういうところには、素直に憧れてしまう。