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『<不良>のための文章術 書いてお金を稼ぐには』/永江朗

<不良>のための文章術 (NHKブックス)

<不良>のための文章術 (NHKブックス)

タイトルに、「書いてお金を稼ぐ」とある通り、文章でプロを目指すならこのくらいはやっておけ!という実践的なアドバイスが詰め込まれた一冊。プロといっても、ここで扱われているのは、雑誌の記事や新聞の短いコラムを書くライターのことだ。だから、よくある、小説や論文を書く人のための文章術本とはかなり方向性の異なるものになっている。

本書の売りは、永江自身の文章作成プロセスを例に、「お金を稼げる」文章を書くためのテクニックが細かく解説されているところだろう。書評、お散歩ガイド、グルメガイド、エッセイなどの分野で、掲載誌によって文体や固有名詞を使い分けるようす、いかにも素人っぽいぐだぐだな文章をプロの文章に修正していく手つきは鮮やかで、なるほどねーって感心してしまう。

そしてもちろん、文章術本の定番である、文章を書く際の心構え、おさえなければならないポイントについても多くのページが割かれている。曰く、「きちんと文章全体の設計図を描いてから書きはじめよ」、「文章とは読み手のためのものであって、書き手のためのものではない」、「ちっぽけなあなたの"自分らしさ"など不要」、「媒体によって想定される読者をかんがえて書くべき」、「凡庸さを避けるために複数の方向からアプローチせよ」、「正論や美文はそもそも期待されていない」、「文体にはこだわるな」、「気の利いた風な無内容な言い回しは避けよ」、などなど。どの指摘もおおむね適切なものだとおもえるし、ネットに本や映画の感想をだらだらと書き連ねている俺のような人間にとっては、正直耳が痛いところでもある。このブログの場合なら、一文が長過ぎるし、無意味な接続詞をたくさん使っているし、気取った言い回しがすべっているし、結論がとくにないような文章もかなり多い、ってすぐに突っ込みが入れられてしまうだろう。

そういうわけで、全体的な内容には納得できたのだけれど、この人の文章のすれた感じ、下品な感じというのは正直まったく好きになれなかった。品がいいこと/読者に好かれることと金を稼ぐことは別、なのだろうし、もちろん、わざとこういう書き方をしているのだろうけれど…。

なぜ文章を書きたいのかと問われて、「自分を表現したいから」「自己実現のため」という人は、プロの書き手になるのはやめてください。読者が(それ以前に編集者が)迷惑します。誰もあなたのちっぽけな「自分」、ありもしない「ほんとうの自分」なんか読みたくありません。関心もない。自分を表現したいという人は、誰にも迷惑をかけないように、こっそりと日記でもつけて、ときどき自分だけで読んでください。(p.13)

たとえばこんなところ。内容的には、まあその通りだろう。自分の感情をろくに検閲もせずに垂れ流しにして、ひとりで悦に入っているような文章というのは、大抵、読むに耐えないものだ。俺だって、「自分を表現したい」「自己実現のため」に文章を書きたい、って聞かされたら、文章を書こうとする人が、何もそんな紋切り型な言い方をしなくたって…くらいのことはおもってしまうかもしれない。

でも、本当に魅力的な文章というのは、まさにそういう、他人からすればどうでもいいような、ごくごく個人的な感情が基盤にあるものなんじゃないだろうか?それをなんとか他人に伝えるために、冷静になってみたり、読み手の立場を想像してみたり、客観性を担保しようと知恵をしぼってみたりするなかで、はじめて文章にはその人の心の動きや熱といったものが、すなわち文章の核となるべきものが、宿るようになるんじゃないだろうか?少なくとも、俺はそういう「ちっぽけな自分」を大事にした文章の方が、<不良>を気取った偽悪的な文章や、読者の感情をコントロールしたいっていう欲望が丸出しになった文章なんかより、よっぽど読みたいけどなー、なんておもったりしたのだった。

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…うーん、今年こそ、"去年の反省&今年の抱負"的な新年っぽいエントリを上げようとおもっていたはずなのに、気がついてみれば今日で正月休みも完全におしまい。もうすっかり2013年ですね!こんな辺境の地までわざわざお越しくださっているみなさま、明けましておめでとうございます。そしていつもありがとうございます。今年がみなさまにとって、後からおもい出すだけでニヤニヤが止まらなくなっちゃうくらい、素晴らしくハッピーな一年になりますように!!