
公演概要・所感
2018年の1stアルバム再現ライブ以来となるダイアン・バーチ。今回は最新作『Flying On Abraham』を引っ提げての公演である。このアルバムが1stをおもわせるような70sマナーの、それでいて2nd以降の音楽性もほどよくミックスされたような、非常に素敵な作品だったのもあって――ローラ・ニーロ、キャロル・キング、リッキー・リー・ジョーンズあたりのナチュラルで上質な感じが好きな人なら絶対刺さるはず――かなり期待して会場に向かったのだった。
6年振りに見たダイアン・バーチは、いかにもSSW然としたさっぱりとしたお姉ちゃんという感じで、MCもかなりがっつり喋ってオーディエンスを盛り上げるスタイルになっていた。…というか、こんなに喋る人だったのね!とおもった。前回のライブはアルバムを再現するというコンセプトがあったためか、MCもほとんどなかったような記憶なのだけれど。
ポール・ステイシーが格好良過ぎた夜
この日の主役の一人は、新作のプロデューサー兼ギタリストのポール・ステイシーだったと言ってもいいだろう。甘くクリアなトーンは美しく、ソロはバリエーション豊かでいずれも格好良く、ニック・ピニ、ジェレミー・ステイシーのリズム隊との盤石すぎるアンサンブルには、冒頭からうっとりさせられてしまう。
そこにダイアン・バーチのピアノと歌声が乗っかってくるのだが、ソウルフルだったりジャジーだったりゴスペル的だったりするあの独特の声が、抜群のメロディーと演奏の上で自由にグルーヴしていくわけで、もう、ポップミュージックに他に求めるものなんてないよね…という気分にさせてくれる。まあ端的に言って至福のひとときというやつなのだった。
なかでも白眉だったのは、クリストファー・クロスのカバー"Ride Like The Wind"。選曲からして絶妙だし、曲のエンディングでポール・ステイシーがギターソロをばりばりと弾きまくると、会場のテンションもぐんぐん上がっていく。俺の席はちょうど彼の目の前だったので、ダイアン・バーチはそっちのけで(というか、彼女はピアノの向こう側にいたので見えづらかったのだ)、終始彼のプレイをじっくりと堪能させてもらった。"Jukebox Johnny"や"Moto Moon"、"Boys On Canvas"あたりでも、ギターのフレーズがかなり印象的だった。
Blue Noteはチケット代が高すぎるので個人的にはまったく好きではないのだけれど――そもそもポップソングに高級感は求めていないので、ライブハウスとか小さめのチープ目な会場で聴く方が良い――、これは聴きに行けてよかった!と素直におもえるライブだった。
