ジャコと僕はそれぞれのフットボール・チームのクォーターバックをやっていて、バスケットボールも好きだった。それにふたりともソウル・バンドでベースを弾いていて、宗教はカトリックで、ハイ・スクールで建築製図を学んでいた。共通する部分が多かったんだ。また僕たちはホンダのオートバイを持っていたんだよ。赤、白、黒の3種類があったホンダのニューマシンは、ごく普通の少年にとって抗しがたい魅力を放っていてね。/ジャコもホンダに魅せられ、新聞配達で貯めたお金で黒の"ホンダ・ブラック90"を買ったんだ。ティーンエイジャーにとっては、オートバイに乗ればどこにでも行けるという自由を新しく発見したようなものだったんだ。当時、フォート・ローダーデイル周辺は、白い砂浜と南国的な気候で、美しい冒険の世界という雰囲気を持っていた。まるでこの世の楽園のような場所だったんだ。大きな転換期にあったアメリカという国から完全に隔離されていたよ。(p.67,68)
そんな"ごく普通の少年"であったかもしれないジャコは、長じて"世界最高のベーシスト"になる。こっちは、そんなエレクトリック・ベースのパイオニアとしてのジャコについての、ヴィクター・ウッテンの言葉。
あらゆるベース・プレイヤーは、初めてジャコを聴いたときのことを覚えている。彼にはそのような時間を止める力があったんだ。私も例外ではない。私はそれまでとは別の人間になったよ。私が15歳のときだ。そしてそれからほぼ2年後、私は初めてジャコのライヴを見た。その後、私はこれから先の人生をずっと音楽とともに過ごすことになるだろうと悟ったことを覚えているよ。彼はそれほどまでに素晴らしく、人生でどんな不幸に見舞われようとも、私が見たジャコのプレイに少しでも近づくことができれば、そして私がジャコから受けたのと同じような気持ちを私も誰かに与えることができれば、生きる意欲が湧いてくるだろうと感じたほどだ。ジャコは神が私たちに与えた贈りものだったんだ。(p.122)
かっこいいー!読んでいるだけで胸が熱くなってしまう。ジャコのことになると、みんな落ち着いてなんていられないのだ。