- 出版社/メーカー: 紀伊國屋書店
- 発売日: 2011/04/28
- メディア: DVD
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独立系映画会社のプロデューサーをしていた父親が、ある日突然自殺してしまう。父親を失った家族は、突然の出来事に深く傷つきながらも、やがて前を向いて少しずつ歩き続けていくのだった…!というプロット自体はまあかなりありがちなものなので、物語を印象づけるためには他に何かフックになるような要素が必要になってくるだろう。はっとするほど美しい映像だとか、妙に忘れがたい台詞とか、そういうちょっとひっかかるような細部が。でも、この作品の場合、そういった要素が一切感じられなかったんだよなー。
複数のエピソードが冗長かつ散漫に提示されているだけで、細かな描写や登場人物のふるまいひとつひとつにしても、映像や音楽の使われ方にしても、ほとんど既視感しか感じられなかった、っていうか。「残された妻と子供たちがどんな風に父の死を受け止め、変化して(あるいは変化することなく)その後の人生を歩んでいくのか」っていう、本作のメインテーマであるはずのその辺りもなんだかぼやっとしていた描かれ方だったし、どうにも全体的にぱっとしない印象だった*1。エンドロールに"Que sera sera"が流されたりされても、そんなのはあまりにもふつう過ぎ、単純過ぎというか。もうちょっとおもしろくできそうな要素はいくつかあっただけに、残念な作品だった。
*1:とはいえ、そんなぱっとしなさこそが、ある種のリアリティに結びついているようには感じられる。我々が毎日やり過ごす平凡な日常には"ちょっとひっかかるような細部"などそうそうあるものではないし、人の感情や言葉やふるまいってやつは、結構ありきたりで"どこかで聞いたことのあるような"ライン、"ぱっとしない"ラインをついついなぞってしまいがちなものだからだ。