- 出版社/メーカー: ジェネオン エンタテインメント
- 発売日: 2004/12/03
- メディア: DVD
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全体の3分の2くらいはごく普通のハイスクールでの日常が映し出されているだけなのに、全編通してとても静謐で、息の詰まるような緊張感が続いていくのがすごい。その静けさのなかで、ふたりの少年が狂気へと向かい、決して取り返しのつかない場所へと足を踏み入れていってしまうさまが描かれていく。彼らが完全にその場所に身をおいたとき、彼らの世界、彼らを取り巻く日常の世界は簡単に崩れ去る。その瞬間は本当に残念なくらいにあっけないものだ。何もかもをぶっ壊してやりたい、っていう彼らの気概に反して、その崩壊はどうにもしょぼくれていて、ぱっとしない。
この映画のなかには、物語もなければ、明確な主張も、分析もない。事件の経緯と当事者たちの状況とを、ごく淡々と描き出しているだけだ。だから観客は、銃を撃ったふたりの少年の気持ちを理解することはできないし、彼らの心情に寄り添おうとすることだってむずかしい。作品は、ただこの出来事を"こういうもの"として提示しているだけだから、観客はそれを"そういうもの"として認識する他ない。本当にそれだけだ。だからそこには当然、結論だとかまとめのようなものは存在しない。
作品の内容を自分がたやすく理解できるようにまとめる、っていう行為には、内容を矮小化して解釈しようとするような側面があるけれど、登場人物たちの後姿ばかりを追い続けるカメラが主張しているように、この映画にはそういう安易な解釈、単純な理解を拒むような頑なさがある。しかしそれでも、映画が終わって――ふーん、なんかよくわかんなかったけど怖かったねー、なんて言いながら――生活のなかに人が戻っていったとき、そこには何か、言葉にはならないかもしれないけれど、少なくとも何かしらが残っているはずで、そこにたぶん映画の力というものがあるんだろう、とおもう。
ただ、ひとつどうしても気にかかるのが、映画全体に漂う美しさや儚さ、もっと言ってしまうなら、おしゃれ感みたいなものだ。解釈を拒んだ中立的な作風で、安易な理解なんてできないんだよ、って言っているのに、それを描き出すタッチがちょっと美し過ぎるんじゃないだろうか、なんておもってしまう。うまく言えないのだけど、事件がもう一歩で現実味を失ってしまいそうな、ファンタジーになってしまいそうな危うさがあるように感じられるのだ。もちろん、そこがこの作品の大きな魅力でもあるわけだけど…。