- 発売日: 2013/11/26
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インドはムンバイのスラム街で育った青年、ジャマールがクイズ・ミリオネアに出場、順調に勝ち上がり、残すところあと1問、ってところまでたどり着く。なぜ、いかにも無学な彼が、誰もが到達しえなかった高みにこれほどまで近づけたのか?彼はインチキをしたのだろうか、よほどの幸運があったのだろうか、もしかしたら天才なのか、それとも…、ってことで、ジャマールがクイズをどんどん解いていく様子と、彼の半生とが代わる代わるに映し出されていく。
物語は凝ってはいるのだけど、むちゃくちゃわかりやすくてベタな構成をしている。でも、だからと言って、この物語や構成について、あまりにもつくりものじみている、なんて批判をしてみたところでほとんど意味はない。なぜって、ここで描かれているのは、夢の力、ファンタジーの力が人を救うことについてだからだ。
いつだって現実というのは息苦しく、辛くさびしいものだ。そんな現実と対峙して、少しでも明るい場所を切り開いていくために、人は夢を見るし、ファンタジーを作り出そうとする。もちろん、この映画のなかでも描かれているように、誰もが皆その夢を叶えられるというわけではない。ジャマールと兄のサリームとは明白に表と裏、光と影の関係にあるし、ミリオネアを勝ち進んでいくジャマールに自らの夢を重ね、彼に声援を送るのは、這い上がる見込みもないままスラムで日常を送る人々に他ならない。
けれど、叶えられる可能性がいかにわずかであろうと、それでもなお夢を見てしまうこと、ファンタジーを求めてしまうこと。それは誰かが止めようとおもって止められることではない。決して手が届かないかもしれない、でもそれでも手を伸ばさずにはいられない、って必死で何かを求めようと足掻く気持ち、そこにこそ美しさというものはあるはずで、そんな人の姿を大胆な筆致で描いてみせたからこの映画は感動的なんだろう。ジャマールは己の夢を"運命"だと一途に信じ続け、最終的にはそれをつかみ取ることになる。物語的にはいかにもな予定調和だけど、そこには予定調和であるがゆえのカタルシスがあり、強度とでもいうべきものがあって、それがこの作品に他にはないような熱を与えている。そんな風におもった。