ひさびさに本棚を整理していたら出てきた『文藝』の2007年秋号に掲載されていたもの。もういまでは単行本も出版されている。見つけた『文藝』はぱらぱらっと見てすぐに捨ててしまうつもりだったのだけど、予想外に気に入ってしまって、つい一息で読んでしまった。
男女の"友情"関係の微妙な揺らぎを、ゆるめでありつつもリズム感のある文体で描き出した、って感じの作品だ。大したストーリーとかがあるわけではなくて、まあいわゆる淡々とした小説って感じなのだけど、台詞とか主人公のゆらゆらと漂う心理描写、おもしろい言い回しなんかがフックになっていて、読ませる。とにかく読んでいて心地いい文章で、小説を読むヨロコビっていうのは、まずはこういうとこにあるんだよなー、なんて、しょっちゅうおもっていることをまたおもった。
男女の間にも友情は湧く。湧かないと思っている人は友情をきれいなものだと思い過ぎている。友情というのは、親密感とやきもちとエロと依存心をミキサーにかけて作るものだ。ドロリとしていて当然だ。恋愛っぽさや、面倒さを乗り越えて、友情は続く。走り出した友情は止まらない。
たとえば、ここの前半なんて、あーうまいこというなー、なるほどねー、なんておもわされちゃうところなんだけど、そのすぐ後に、「走り出した友情は止まらない。」なんてギャグみたいな一文を入れてくる。このセンス、結構すきだなー。
タイトルは正直いまいち、っておもうし、小説としてうまくいっていない箇所もちょいちょいあるように感じられたけど、作品全体の雰囲気や構成、シーンの切り出し方、ペース配分、文章の感じはなかなかすきだった。この人の他の小説も読んでみたいなー。
- 作者: 山崎ナオコーラ
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2007/12/07
- メディア: 単行本
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