立川シネマ・ツーにて。あちこちでやたらと絶賛されているこの映画だけど、うーん、俺はあんまり惹かれなかったな…。たしかに退屈はしなかったけど、そんなプッシュしたいって程じゃないっていうか。ゴッサムシティで日々悪人を退治しまくるバットマンの前に、いわゆる動機を持たない狂気の犯罪者、ジョーカーが現れる。そこにアゴの割れた正義漢の検事、ハービー・デントの活躍が絡んできて…!
なんかいまいち、って感じた原因は、絶対悪っぽいジョーカーのキャラクターとか、コイン投げで人の生き死にを決めるシーンとかから、先日読んだばかりの『血と暴力の国』のシュガーをおもい出してしまったせいに違いない。比べても仕方ないのはわかっているけど、もう、こんなストーリーじゃぜんぜん迫力が足りない!っておもってしまった。
善と悪とがコインの裏表のように切り離せないものとしてある、ってイメージ、バットマンとジョーカーの関係、トゥーフェイスの暴走などなど、メタファーがていねいに配置されている感覚、よく練られてるなー、って印象はあるのだけど、それらが知覚の扉をぐっと開いてくれるような強度を持っていたか、ってかんがえてみると正直微妙だった気がする。ヒーローの葛藤、善悪の葛藤のテーマ自体もごくありふれたものだから新鮮味はないし、いまさらそれを重厚、シリアスにやられただけじゃあんまりぐっとこないっていうか…。
だからやっぱりこれはバットマンっていうよりジョーカーの、ヒース・レジャーの映画であって、そういう意味では、ヒース・レジャーの演技はたしかに評判通りかっこよくて、それだけでも見た甲斐みたいなものはあったとおもう。ジョーカーの狂った感じが、不気味かつ妙にリアリティをもっていて。建物爆破のシーンなんか、すっごいクールだった。
でもやっぱり、ジョーカーには、残酷なこととか卑怯なこととか神経を逆撫でするような振る舞いをもっともっとして欲しかった。その傍若無人さとカリスマ性とでゴッサムシティのあらゆるものを操るようになっていく、って感じの描写をもうちょっと見たかったかな、って気がする。
えっと、なんか微妙だった、って感想に終始してしまったけど、それはたぶん俺がアクションシーンとかにあんまりおもしろみを感じないせいもあるんだとおもう。カーチェイスみたいなやつとかさ、見てても別にエキサイトしないんだよなー。