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『サマリア』

サマリア [DVD]
DVDで。キム・ギドク監督の作品を見たのははじめてだったけど、これはすごくよかった!どうにも切なくて、やりきれない感情がぎうぎうに詰まっている映画。

援助交際する2人の少女と、ひとりの父親の姿を描いた物語なのだけど、そのタッチはとにかく冷徹だ。援助交際そのものがよい/よろしくない、なんていう単純さは一切ないし、提起されるさまざまな問題に簡単な決着がつけられることもない。屈折していつつもやっぱり純粋としか言いようがない登場人物たちにも、安易な救済は決して与えられない。ただ、そんな突き放したような視線でも、何かを、誰かを断罪しようというわけではないところがよくて、すげーよくできてるのな、こういうのが映画がうまい、って感じなのかも、なんて俺は感嘆しつつ見ていた。

とにかく、全編通して救いがないみたいにおもえて仕方ないものだから、映画にどっぷり浸かって見ていくなかで、どんどん息苦しさが増してくるようだった。とくに最後の川原のシーンは圧巻で、父の乗った車を娘の車がよろよろと追いかけていくその情景は、ちょっと他では見たことのないような悲しみを湛えているように感じられた。車の走る姿があんなに切なく見えたのは、きっとはじめて。

直接的なことばが抑制されているのと対照的に、メタファーの使われ方はごく明快で、寓話的な印象が強い作品だった。その辺り、少しあざといかなっておもえないこともないのだけど、映画全体の完成度は高いし、なにより物語の吸引力があるから、ぐいぐい引き込まれて見てしまったのだった。これから他のキム・ギドク作品も見ていきたいなー。