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『百万円と苦虫女』

百万円と苦虫女

吉祥寺バウスシアターにて。シンプルだけど、雰囲気がしっかり作られたロードムービーで、よかったなー。

短大を卒業したものの、就職浪人でフリーター生活を送る鈴子(蒼井優)は、他人と接するのがいまいち得意じゃなくて、いつもどこか居場所がなさそうな雰囲気を醸し出している21歳。彼女はある事件をきっかけに、なぜか、「100万円を貯めたらこの家を出て行く!」と宣言することに。そうして家を離れてひとり暮らしを始めるものの、ひとつ所に長居することはなく、バイトで100万円貯めたら次の土地へ引越し、ってな具合に各地を転々をしていく。

そういえば、バイトで金を貯めつつあちこち渡り歩く女子、っていうのは、『マイ・ブルーベリー・ナイツ』のノラ・ジョーンズも同じだったっけ。映画全体が雰囲気重視なところも、ちょっとだけ似てるかも。でも、『百万円と苦虫女』は、あれよりはずっと主人公の内面に寄り添った作品に仕上がっている。彼女の非ポジティブ、ついつい逃げを志向する性格を、繊細でやわらかなタッチで描いているのが日本の映画っぽくて、いい感じ。

話としては、まあけっこう地味ではあるんだけど、蒼井優はやっぱりやたらとかわいいし存在感があって、画になるよなーほんと、なんてたのしんで見られた。鈴子が行く先々で巻き込まれるいろいろなトラブルのシークエンスなんかは、ひたすら定番ちっくなものでしかなくなっているんだけど、これはとにかく蒼井優ありきな映画、なのであって、そしてそれでぜんぜんおっけいじゃん、って言えるくらいの存在感、見せる感があるから、物語の単純さはとくに気にならない。

っていうよりむしろ、やっぱりこういうシンプルなロードムービーはたのしいよなー、とか素直におもった。意表を突かれる展開なんかがあるわけじゃないんだけど、こう、ちょっとだけ日常を照らしてくれるような、押し付けがましくない空気があるのがいいな、って。

あー、あと、エンディングを歌ってるのが原田郁子だったり、ホリデーアパートメントとタイアップしていたり、結構ターゲットを絞って作られた作品のようにおもえたんだけど、そういうところはきっちり決めてきてるな、と感じた。手縫いのカーテン一枚を持ってあちこち放浪する女子、ってイメージにぴんとくる人なら、きっと満足できる作品になっているんじゃないかとおもう。