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『ルーツ・ロック・レゲエ』

これは大学の授業で見たんだけど、よかったなー。70年代にジャマイカで撮影された、ルーツロックレゲエに関するドキュメンタリー。

音楽ドキュメンタリーなので、もちろん演奏シーンはふんだんに収録されているし、レゲエは政治、ラスタファリアニズム、社会情勢などなど、っていうかもうジャマイカの生活全体と密接に結びついたものだから、それについての解説もちゃんとある。ジミー・クリフは、インタビューのなかで、「レゲエで大切なのは、音楽よりもむしろメッセージだ!」みたいなことを(たしか)言っていた。60年代から70年代にかけて、スカ→ロックステディ→レゲエ、という風にテンポが落とされていったのには、メッセージをちゃんと伝えるため、なんて理由もあったらしい。そんな中で、政治家も自らのキャンペーンソングの作曲をアーティストに依頼していたりするのは、なんだかおもしろい。

でも、俺がなによりこの映画でたのしかったのは、当時のレゲエシーンの雰囲気みたいなものだ。リー“スクラッチ”ペリーのスタジオでの録音の風景とか、全体的にやたらとゆるくて、すばらしいんだ。みんなすっごい笑顔で。歌っているのは貧困や政治、希望の祈りみたいなもののくせに、めちゃくちゃだらだらといい加減にやっている(ように見える)し。あと、ナレーションが、「(ジャマイカの)アーティストにとって、レコード屋は水飲み場のようなものだ」なんて言っていたりもして。なんで水飲み場なのかっていうと、アーティストたちは自分のレコードの売り上げをレコード屋にちょくちょくチェックしに行く、って意味で、それは儲けを横取りされたりしないように、ってことらしい。すごいね!

そんな、どこかのどかな、でもやっぱりシリアスな音楽であるルーツロックレゲエの魅力が、この映画にはたっぷり詰まっている。演奏シーンはどれもすごくいいんだけど(なにしろ大御所ばっかりだ!)、ジョー・ヒッグスが、「これもレゲエなんだよ」とかなんとか言ってアコギ一本で"There's a Reward"を弾き語りするシーンは、もう最高としか言いようがない。大学で見たのでしょうがないけど、ほんと言うと、もっと爆音で聴きたい映画だった。