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『なぜ、「できる人」は「できる人」を育てられないのか?』/吉田典生

この本で書かれているのは会社組織の話だったけど、2年ほど前に読んだときに、あーこれっていろいろ応用がききそうだな、とおもっていろいろメモしたりなんかしていて、それをさっき見つけた。今日は、ちょっとそのメモからまとめてみようとおもう。

この本でいう、「できる人」とは、自分のちからで、求められている役割に答えられる人のことだ。

仕事への意欲が高く、目的意識が明確な人。こういう人には、できる→達成感→自己信頼、という成長のスパイラルが起きやすい。

逆に「できない」人には、そのようなスパイラルは起こりにくいし、目標達成へのイメージの描きかただって、当然できる人とは異なるものになってくる、とのこと。なるほど、まあそうなんだろうな。

「できる人」は、自分が「できる人」になっていく過程において、きっと平均レベル以上に努力し、その分重責を与えられ、さらに努力をかさねてきた。けれど、組織にはどうしたって「そこそこの人」や「できない人」がいて、彼らはいわば足をひっぱられることになる。

しかし、あたりまえだけど、「できる人」とは相対的に「できる」のであって、組織全員が「できる人」になることはできない。そして「できる人」は必然的に組織のリーダー的存在になっていくことになるけれど、その位置では価値観のちがう人の可能性、というものが見えにくくなってくる。たとえば、課題を苦しみながらもこなしていっている「できる人」は、仕事を醒めた目で見ている「できない人」には我慢がならなかったりするだろう。でもその怒りを相手にぶつけてみたところで、「できない人」のきもちは、そうかんたんには変わらない。闇雲に相手の価値観を否定したところで、「できる人」と「できない人」のあいだの溝が深くなっていってしまうだけだ。課題の遂行を意識するあまり、相手のかんがえや状況を度外視して、あたらしい、さらなる行動を促してしまう。「ねえ、どうすれば、やる気になってくれるの??」しかし、やるべきことを教えることと、やる気を起こさせることとはまったく別の問題だ。

という感じに「できる人」と「できない人」の違いがまとめてある。そして、いよいよじゃあどうしたら「できる人」を育てられるようになるのか?という、いちばん肝心な段階に至って、この本は一気に具体性をなくしてしまい、求心力もなくなってしまうのだけれど、

「伝えるだけ」ではなく、「伝わること」に目を向けること。

ということが書いてあって、あーそれはそうだよなあ。と俺はなんだか納得してしまったのだった。よかれとおもってやっていることがなかなか伝わらない、というのは誰だってもどかしい。だけど、伝わらない、という状況でヒステリックにならず、落ち着いて相手の立場や状況を想像してみること。そういうことが「できる人」には求められてくるのではないか。おまえなー、それができないから苦労してるんだろー、わかんねーんだよまじで、という声が聞こえてきそうな気もするけど、やはり、求められているもの、イラっときたときにこそ働かせるべきものは、想像力と寛容さなんじゃないかなーとおもってしまう。

まあでも、正直、俺はひとつの組織のなかでみんながみんな同じ方向を向いていたらつまんないじゃん、っておもってしまうところもある。必死になってやらなきゃ、大変なんだからさ!って人はもちろんぜったいに必要だけど、それだけじゃないでしょ、っていうか。なんかもっと、すこし距離を持っていられる人の存在を、どのくらいの寛容さをもって許容できるかってところで、その組織が最終的に豊かなものであるかどうか、っていうのが測れるような気がする。

たぶん、俺みたいなかんがえかたは、課題の遂行、っていういちばんの目標の前でなに甘いこと言ってんだおまえ、ってことになるんだとおもう。協調性とか、社会性みたいなの、あんまりないしさ。ただ、そういうかんがえかたもあるんだ、ってことを「できる人」がわかっていたほうが、きっといろんなことがうまくいくんじゃないかな、ともおもう。むずかしいところだけど。