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『ランド・オブ・プレンティ』

ランド・オブ・プレンティ スペシャル・エディション [DVD]

ランド・オブ・プレンティ スペシャル・エディション [DVD]

  • 出版社/メーカー: アスミック・エース
  • 発売日: 2006/05/12
  • メディア: DVD
ヴィム・ヴェンダース監督、『ランド・オブ・プレンティ』を見た。DVDで。俺はヴェンダースの映画が昔からすごくすきで、今まで見た作品のなかにハズレだとおもえるものはごく少ないのだけど、でも、正直この作品はいまいちだとおもった。

主人公の女の子は、他者に対する想像力や信頼の感情、他者の痛みへのまなざしをしっかりともっており、それが物語全体を照らす光になっている。ポジティブな感じがしていい。けれど、叔父さんの、誇大妄想的で狂信的な、所謂“アメリカの正義”を全身で体現するようなキャラクターはあまりにも類型的にすぎる、と感じた。いや、意外とじっさいあんなやつもいるのかもよ、ってことは頭ではかんがえられる。けれど、あまりにも彼によって象徴させたい、とおもわれるイメージが強く出すぎてしまっているようで、いろいろな意味でリアルさを失っているようにおもった。もちろん、彼をこういうぶっとんだキャラクターに仕立てたのは監督の思惑によるものなのだろうけど、それにしても、役割をふり当ててる感が強すぎる、というか。

9・11テロによってトラウマを呼び覚まされたベトナム戦争の帰還兵で、監視用カメラをつけたバンには星条旗、ケータイの着メロはスター・スパングルド・バナー、って。行き過ぎなのを滑稽に見せようというのはわかるけど、ちょっとやりすぎ、とおもって、ひいてしまった。そして、叔父さんのキャラクターが単なる物語の駒であるかのようにおもえてくると、主人公の描かれ方まで、なんだか薄っぺらに感じられてきてしまって。この映画はアメリカを愛するヴェンダースが、現在のアメリカへ警鐘をならした作品だといえそうだけど、でもこの物語はやはり紋切り型に過ぎるのではないか、とおもった。

主人公が、屋上でiPodで音楽を聴きながらふらふらと踊るシーンはとても印象的。そういう部分部分では、けっこうすきなところもあった。