Show Your Hand!!

本、映画、音楽の感想など。

思想・哲学

『センスメイキング 本当に重要なものを見極める力』/クリスチャン・マスビアウ

今日、ビジネスの世界でもっとも重要視されているのはSTEM(Science, Technology, Engineering, Mathematics)やビッグデータ、アルゴリズム思考といった、いわゆる理系の知識だと言えるだろう。現代はデータ至上主義の時代だ、と言ってもいいかもしれない。…

『獄中記』/佐藤優

外務省の元主任分析官で、2002年に背任・偽計業務妨害で逮捕された佐藤が、東京拘置所の独房内で記した日記、手紙などをまとめた一冊。全体に流れるしんとした静けさと、そのなかで着実に脈打っている思想の強靭さが印象的だった。 佐藤は、自身が巻き込まれ…

『21世紀の資本』/トマ・ピケティ(その3)

資本に対する累進課税を実施するとしても、それは全世界的に行われなければならない。タックスヘイブンというやつがあるのだから、各国がばらばらに課税を行ったところで、資本は別の国に逃げていくだけだからだ。そしてもちろん、課税実施の際には、全世界…

『21世紀の資本』/トマ・ピケティ(その2)

前回まとめたような分析をもとに、ピケティは、なぜ格差が拡大していくのか、というメカニズムを説明するための理論を提示してみせる。先に書いたとおり、統計は、資本蓄積の速度は総所得の伸び率よりも大きいということを示しているわけだけれど、これをシ…

『21世紀の資本』/トマ・ピケティ(その1)

世間の多くの人と同じく、俺も2015年の正月休みを利用して『21世紀の資本』を読んだのだった(けれど、感想をまとめたりブログを更新したりするのが億劫で、気がつけば読み終えてから3年半も経ってしまっていた…)。読み終わっておもったのは、何しろボリュ…

『知識人とは何か』/エドワード・W・サイード

サイードによる知識人論。BBC放送向けに行われた講演をまとめたもので、シンプルな主張がコンパクトにまとめられている。 サイード曰く、知識人とは、権力や伝統、宗教やマスメディアや大衆や世間に迎合せず、また、利害や党派性や原理主義や、専門家の狭量…

『自発的隷従論』/エティエンヌ・ド・ラ・ボエシ

「なぜ、多くの民衆は、人間の本性とも言える自由を放棄してまで、たったひとりの苛虐な圧政者のもとに隷従するのか?」という不可思議な事態の原因が考察されている一冊。考察といっても、何らかの客観的な指標に基いて論が展開されているわけではなく、古…

『読書について』/アルトゥール・ショーペンハウアー

読書について (光文社古典新訳文庫)作者: アルトゥールショーペンハウアー,Arthur Schopenhauer,鈴木芳子出版社/メーカー: 光文社発売日: 2013/05/14メディア: 文庫この商品を含むブログ (15件) を見る ここ数か月というもの、本読みをすっかりさぼってしま…

「ヘーゲル法哲学批判序説」/カール・マルクス

ユダヤ人問題によせて ヘーゲル法哲学批判序説 (岩波文庫)作者: カール・マルクス,城塚登出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 1974/03/12メディア: 文庫購入: 2人 クリック: 35回この商品を含むブログ (23件) を見る マルクスがヘーゲルの法哲学を批判しようと…

「ユダヤ人問題によせて」/カール・マルクス

ユダヤ人問題によせて ヘーゲル法哲学批判序説 (岩波文庫)作者: カール・マルクス,城塚登出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 1974/03/12メディア: 文庫購入: 2人 クリック: 35回この商品を含むブログ (23件) を見る ブルーノ・バウアーの2つの論文に関する書…

『生きがいについて』/神谷美恵子

「生きがい」とは何なのか、それは人の生にとってどのような意味を持っているものなのか、どのように人は「生きがい」を得るに至るのか、などといったことについて扱われた一冊。もちろんこれは「生きがい」を手に入れるためのハウツー本ではないわけで、そ…

『共産党宣言』/カール・マルクス、フリードリヒ・エンゲルス

マルクス・エンゲルス 共産党宣言 (岩波文庫)作者: マルクス,エンゲルス,Karl Marx,Friedrich Engels,大内兵衛,向坂逸郎出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 1971/01/01メディア: 文庫購入: 6人 クリック: 114回この商品を含むブログ (84件) を見る 1848年に公…

『ふしぎなキリスト教』/橋爪大三郎、大澤真幸(その3)

ふしぎなキリスト教 (講談社現代新書)作者: 橋爪大三郎,大澤真幸出版社/メーカー: 講談社発売日: 2011/05/18メディア: 新書購入: 11人 クリック: 184回この商品を含むブログ (137件) を見る 第3部 いかに「西洋」をつくったか 第3部で扱われるのは、キリスト…

『ふしぎなキリスト教』/橋爪大三郎、大澤真幸(その2)

第2部で取り上げられるのは、イエス・キリストにまつわるさまざまな疑問だ。イエス・キリストとはいったい何か?どのようにかんがえられ、どのように扱われてきたのか?預言者ではない、とされているが、じゃあいったい何者なのか?人間なのか神なのか?…と…

『ふしぎなキリスト教』/橋爪大三郎、大澤真幸(その1)

ふしぎなキリスト教 (講談社現代新書)作者: 橋爪大三郎,大澤真幸出版社/メーカー: 講談社発売日: 2011/05/18メディア: 新書購入: 11人 クリック: 184回この商品を含むブログ (137件) を見る 非常にわかりやすくまとめられた一冊。大澤が「誰もがいちどは抱く…

『悲しき熱帯』/クロード・レヴィ=ストロース(その2)

前回のエントリには、読みづらさのことばかり書いてしまったけれど、1巻の終盤以降からは、フィールドワークの話が主軸になっていく(そこから、横道に逸れるような形で省察が展開される)ので、だいぶ読みやすくなってくる。レヴィ=ストロースは、南米の「…

『悲しき熱帯』/クロード・レヴィ=ストロース(その1)

悲しき熱帯〈1〉 (中公クラシックス)作者: レヴィ=ストロース,Claude L´evi‐Strauss,川田順造出版社/メーカー: 中央公論新社発売日: 2001/04/01メディア: 単行本購入: 13人 クリック: 89回この商品を含むブログ (126件) を見る レヴィ=ストロースの思想と方…

『職業としての学問』/マックス・ヴェーバー

マックス・ヴェーバーが1919年に行った講演を文章化した一冊。80ページ程度の薄い本だけれど、内容は濃密で、なかなかおもしろく読めた。 かつて、学問というものは、「真の実在」や「真の芸術」、「自然の真相」、「真の神」、あるいは「真の幸福」への道で…

『魂の労働 ネオリベラリズムの権力論』/渋谷望(その3)

終章「<生>が労働になるとき」は、全体のまとめ的な内容の一章だ。新自由主義的な言説、新自由主義的なコモンセンスが醸成されるに至った理由と、それらを打破するための方策について、改めて考察がなされている。 「自己実現」、「労働の喜び」、「やりが…

『魂の労働 ネオリベラリズムの権力論』/渋谷望(その2)

魂の労働―ネオリベラリズムの権力論作者: 渋谷望出版社/メーカー: 青土社発売日: 2003/10/01メディア: 単行本購入: 5人 クリック: 88回この商品を含むブログ (94件) を見る 2章から8章においては、新自由主義的な言説とそれがもたらす効果について、さまざま…

『魂の労働 ネオリベラリズムの権力論』/渋谷望(その1)

現在の新自由主義社会で作動している権力ゲームの内実を分析し、そのなかでもとくに「労働」とはいかなる意味を持ったものになっているのか、ということについて語られた一冊。買ったのは大学生の頃(8年くらい前)だけれど、最近ようやく読み終えたので、簡…

『精神疾患とパーソナリティ』/ミシェル・フーコー

精神疾患とパーソナリティ (ちくま学芸文庫)作者: ミシェル・フーコー,中山元,Michel Foucault出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 1997/12メディア: 文庫 クリック: 22回この商品を含むブログ (19件) を見る フーコーの最初の著作。精神の病は身体の病とはど…

『哲学の教科書』/中島義道

哲学の教科書 (講談社学術文庫)作者: 中島義道出版社/メーカー: 講談社発売日: 2001/04/10メディア: 文庫購入: 15人 クリック: 228回この商品を含むブログ (89件) を見る 「哲学には「教科書」などあるはずがないということを、これでもかこれでもかと語り続…

『孤独な散歩者の夢想』/ジャン=ジャック・ルソー

あなたがいまひどく落ち込んだ気分、みじめでひとりぼっちな気分、もうどうにでもなれ、ってやぶれかぶれな気分になっているのならば、『孤独な散歩者の夢想』を手にとってみるといいかもしれない。この本を書いたルソーというじいさん(64~66歳)は、きっ…

『方法序説』/ルネ・デカルト(その5)

形而上の問題(コギトと神の存在証明)について語ったあと、デカルトは自然界の諸問題へも手を伸ばしている。第一原理はもうばっちり確立できたのだから、そこから演繹的にさまざまな真理を導いていっちゃうよ俺、というわけだ。本書の後半では、当時、彼が…

『方法序説』/ルネ・デカルト(その4)

方法序説 (岩波文庫)作者: デカルト,Ren´e Descartes,谷川多佳子出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 1997/07/16メディア: 文庫購入: 31人 クリック: 344回この商品を含むブログ (203件) を見るようやく本書のメインパート、デカルトの形而上学の基礎をなす、…

『方法序説』/ルネ・デカルト(その3)

さて、先にデカルトが定めた4つの原則のうちのひとつには、「わたしが明証的に真だと認めるのでなければ、どんなことも真として受け入れないこと」というものがあった。けれど、はっきり真であるとわからない限り何ものも受け入れられないとなると、とうてい…

『方法序説』/ルネ・デカルト(その2)

もちろん、いったいなにが真実であるのか、真実と誤りとを見きわめるためにはどうすればいいのか、ということについては、古くからさまざまな哲学者たちによって議論が交わされてきていた。ただ、彼らの掲げる見解はなにしろ多様であるので、仮にそのうちの…

『方法序説』/ルネ・デカルト(その1)

ひさびさに、『方法序説』を読み返している。たぶん、大学の授業で読んだとき以来だ。じつをいうと、このごろは小説を読むのがなんだかまどろっこしくて仕方ない――あーもう、こんなの読んで何になるっていうんだ?とかって、すぐささくれた気分になってしま…

『ポストモダンの共産主義――はじめは悲劇として、二度めは笑劇として』/スラヴォイ・ジジェク

昨年出た、ジジェクによる現代政治論。短く、比較的さらりと読めてしまう一冊だけど、そこはジジェク。歯切れよく好戦的な、いつものジジェク節が炸裂している。21世紀になって起きた、グローバル資本主義における2大ショック――9.11と金融恐慌――を経た、グロ…