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本、映画、音楽の感想など。

フランス文学

『浴室』/ジャン=フィリップ・トゥーサン

『浴室』の物語は、ある日突然、主人公の青年が浴室に引きこもってしまう、というところからはじまる。なるほど、胎内回帰願望のメタファーとしての浴室、とかそういう感じなのかな、などとおもって読み進めていくと、数ページ後には彼はあっさりと浴室を出…

『夜間飛行』/アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ

訳者の二木麻里は、「解説」中で、サン=テグジュペリの資質を指して、「無言の領域で豊かに語る、本質的に寡黙な詩人」と述べているが、本作でも、まさにその寡黙さが全編を覆い尽くしていると言っていいだろう。リヴィエールをはじめとする登場人物たちは、…

『闘争領域の拡大』/ミシェル・ウエルベック

ウエルベックの小説第一作。この自由資本主義社会において、人間の闘争の領域は、経済領域のみにとどまらず、性的領域においてまで拡大している。経済の自由化を止めることができないのと同様、セックスの自由化もやはり止めることはできず、そこには必然的…

『ひとさらい』/ジュール・シュペルヴィエル

シュペルヴィエルの長編。以前に読んだ『海に住む少女』が完璧に素晴らしい作品だったので、それと比べてしまうとやはりどうしても落ちる、という印象はあった。でも、これはこれでなかなかおもしろい小説だ。 物語の主人公は、ビグア大佐という男。父性溢れ…

『とどめの一撃』/マルグリット・ユルスナール

とどめの一撃 (岩波文庫)作者: ユルスナール,Marguerite Yourcenar,岩崎力出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 1995/08/18メディア: 文庫 クリック: 3回この商品を含むブログ (4件) を見る 物語の舞台は第一次大戦の終盤、ロシア革命期のバルト海沿岸。反ボル…

『赤と黒』/スタンダール(その2)

赤と黒(下) (新潮文庫)作者: スタンダール,小林正出版社/メーカー: 新潮社発売日: 1958/05/22メディア: 文庫購入: 3人 クリック: 10回この商品を含むブログ (44件) を見る 前回のエントリでは、「ジュリヤンにとって、出世や恋の成就といったものはあくま…

『赤と黒』/スタンダール

赤と黒(上) (新潮文庫)作者: スタンダール,小林正出版社/メーカー: 新潮社発売日: 1957/02/27メディア: 文庫購入: 3人 クリック: 31回この商品を含むブログ (56件) を見る 『赤と黒』で描かれているのは、極度に利己主義的でプライドが高く、と同時に、異様…

『ムード・インディゴ うたかたの日々』

ムード・インディゴ?うたかたの日々?(字幕版)発売日: 2014/08/01メディア: Prime Videoこの商品を含むブログを見る 渋谷シネマライズにて。ディレクターズカット版を見てきた。ヴィアンのファンなら見て後悔はしないはず…と聞いていた本作だけれど、たしかに…

『潜水服は蝶の夢を見る』/ジャン=ドミニック・ボービー

閉じ込め症候群(Locked-in syndrome (LIS))となり、左目以外はまったく動かすことのできない状態になってしまった男による、「左目のまばたき」によって書かれたエッセイ集。 閉じ込め症候群というのは、脳底動脈閉塞によって脳幹の特定部分に障害が発生す…

『海に住む少女』/ジュール・シュペルヴィエル

海に住む少女 (光文社古典新訳文庫)作者: シュペルヴィエル,永田千奈出版社/メーカー: 光文社発売日: 2006/10/12メディア: 文庫購入: 4人 クリック: 38回この商品を含むブログ (82件) を見る これはひさびさの大当たりだった!シュペルヴィエル、こんなにも…

『星の王子さま』/アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ(その2)

「王子さま」と「僕」との対話は、ほとんどが一方的な「王子さま」の独白のようでもあるけれど、たぶんそうではない。「王子さま」は、やはり、彼の話をきちんと聞いて、受け止めてくれる「大人」というものを必要としていたのではないか。自分の心の内をさ…

『「星の王子さま」物語』/稲垣直樹

「星の王子さま」物語 (平凡社新書)作者: 稲垣直樹出版社/メーカー: 平凡社発売日: 2011/05/14メディア: 新書この商品を含むブログ (1件) を見る 前回と前々回のエントリで取り上げた『星の王子さま』解説本はどちらも物足りなかったので、図書館からさらに5…

『星の王子さまとサン=テグジュペリ 空と人を愛した作家のすべて』

星の王子さまとサン=テグジュペリ ---空と人を愛した作家のすべて作者: 河出書房新社編集部出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2013/04/20メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログを見る ムックというか、編集本というか、まあそういった感…

『星の王子さまの世界 読み方くらべへの招待』/塚崎幹夫

なにしろ、『星の王子さま』という作品が感動的なのは、「王子さま」の最後の決断が、まさにこれしかない、と感じさせるような決断であるからなのだ。塚崎の意見からすれば、『星の王子さま』に書かれているのは、逃避や免罪符やノスタルジアの生暖かい感覚…

『星の王子さま』/アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ(その1)

星の王子さま (新潮文庫)作者: サン=テグジュペリ,Antoine de Saint‐Exup´ery,河野万里子出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2006/03/28メディア: 文庫購入: 24人 クリック: 119回この商品を含むブログ (184件) を見る およそ10年ぶりに再読。世界的大ベストセ…

『純愛(ウジェニー・グランデ)』/オノレ・ド・バルザック

これもドストエフスキー関連で読んだ一冊。1844年、作家としてデビューする前のドストエフスキーが翻訳した、バルザックの有名作だ。もともとのタイトルは、"Eugénie Grandet"。「人間喜劇」的には、「地方生活情景」に属する作品だ。 フランスの田舎はソー…

『うたかたの日々』/ボリス・ヴィアン

ヴィアンの何よりの魅力は、シャンパンの泡のように軽やかでさわやか、きらきらと透明に輝くその文体だろう。重さや寓意性などといったまどろっこしいものはことごとく退けられ、ひたすらエレガントであること、ナンセンスであることだけに意識が向けられて…

『愛人(ラマン)』/マルグリット・デュラス

記憶についての、そしてイマージュについての小説。これだけ繊細で微妙な、しかも派手さのない作品が、フランスでは150万部のベストセラーになったっていうのはちょっと驚きだ。マルグリット・デュラスは、自身の少女時代、仏領インドシナでの中国人青年…