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本、映画、音楽の感想など。

アメリカ文学

『イー・イー・イー』/タオ・リン(その2)

『イー・イー・イー』はシニカルかつセンシティブな雰囲気を持った小説だと先日書いたけれど、それと同時に、超くだらないオフビートでダウナーなギャグをちょいちょいかましてくる作品でもあった。もうほんとどうでもいいけど、でも妙におかしい、って箇所…

『イー・イー・イー』/タオ・リン

大学を無事に卒業して一度はちゃんと就職したもののすぐに辞めてしまい、ドミノ・ピザでだらだらと働きながら、いかんともしがたい倦怠感や寂しさ、ネガティブ感をいつもいつももてあましているフリーターのアンドリュー@フロリダの物語。

『ザ・ロード』/コーマック・マッカーシー

何らかの理由によって破壊しつくされ、荒廃しきった近未来の世界を舞台に、父と少年、2人のあてのない旅のようすが描かれる。マッカーシーの小説ってわりと宗教的っていうか、神とか運命のような人知を超えたところにある力について触れられていることが多い…

『流れよわが涙、と警官は言った』/フィリップ・K・ディック

タイトルのかっこよさに負けず劣らず、内容もじつに素晴らしいディックの74年作。ある朝、TVスターの男(ジェイスン・タヴァナー)が目を覚ますと無名の一般人になっていた、っていういかにもSF的な世界の話であり、その男を追う警察本部長(フェリックス・…

『移動祝祭日』/アーネスト・ヘミングウェイ

パリで過ごした若かりし日々のことを回想しつつ綴った、ヘミングウェイの遺作エッセイ。奥さんとつつましいながらも幸福な暮らしを送っているようすや、パリの街の描写がもうひたすらに輝きまくっていて、とにかく眩しいとしか言いようがない一作だ。

『老人と海』/アーネスト・ヘミングウェイ

なんとなくヘミングウェイの文章が読みたくなって、実家から持ってきた文庫を開いた。もともとは親父の本なのだけど、妙なところに鉛筆で線が引いてあったりなんかして、ちょっとたのしい読書だった。 文章はあくまでもハードボイルドで、つまり登場人物が自…

『カウント・ゼロ』/ウィリアム・ギブスン

カウント・ゼロ (ハヤカワ文庫SF)作者: ウィリアム・ギブスン,黒丸尚出版社/メーカー: 早川書房発売日: 1987/09メディア: 文庫購入: 2人 クリック: 69回この商品を含むブログ (35件) を見る『ニューロマンサー』に続く、スプロール3部作の2作目。『ニューロ…

『ニューロマンサー』/ウィリアム・ギブスン

「サイバースペース」ってことばを発明したウィリアム・ギブスンの長編第一作目にして最も有名な作品。以前読んだときは、あまりの文章のわかりにくさに途中でくじけてしまったのだけど、短編集『クローム襲撃』を読んでから再挑戦してみると、わりにスムー…

『クローム襲撃』/ウィリアム・ギブスン

最近、いわゆるサイバーパンクの原点、っていうので超有名な『ニューロマンサー』を読んでいたのだけど、文章のあまりの読みにくさに挫折してしまい、じゃあ先に短編でも読んでみようか、とおもってこれを借りてきた。 で、ちょっとおもったんだけど、ギブス…

『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』/フィリップ・K・ディック

ひさびさに読んだけど、いやーやっぱりすごい小説!すっかりのめり込むようにして読んだ。とにかく全編通して乾いていて不気味で、でも同時に混沌とした美しさが溢れてもいる。舞台は最終戦争後の荒廃しきった地球。バウンティ・ハンターのリック・デッカー…

『幻影の書』/ポール・オースター

最近翻訳が出た、ポール・オースターの2002年作。飛行機事故で妻と2人の子供を失い、生きる気力をすっかり無くしていたデイヴィッド・ジンマーを救ったのは、ある一本の無声映画だった。映画の主演であり監督でもある人物、ヘクター・マンは過去に謎の失踪を…

『囚人のジレンマ』/リチャード・パワーズ

アメリカ人作家、リチャード・パワーズが1988年に出した第2作。デビュー作の『舞踏会へ向かう三人の農夫』と同様に長大かつ複雑な小説で、やっぱりむちゃくちゃおもしろい。ひとことで内容やプロットを説明できないところ、ややこしいことば遊びや謎かけを次…

『血と暴力の国』/コーマック・マッカーシー

やっぱりマッカーシーの小説は圧倒的におもしろい!読点やかぎ括弧のない硬質な文章がとにかくかっこよくて、そうそう、小説を読むよろこびってまずはこういうところにあるんだよなー、なんておもいつつ読んだ。今作にも、マッカーシー作品の特徴、すなわち…

『たったひとつの冴えたやりかた』/ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア

最近出た改訳版。ハヤカワ文庫では中篇が3作収録されていたけど、この本にはいちばん有名なひとつ目の作品だけが収められている。いま改めて読んでみても、素直にいい小説じゃんっておもえた。人間の少女とエイリアンとの友情、そしてその先に待ち受ける切な…

『オン・ザ・ロード』/ジャック・ケルアック

親友ディーンにひっぱられるように北アメリカ大陸を何度も往復する作家、サル・パラダイスの旅、というか放浪の物語。文章の持つリズムや熱、前のめり感、全力をふりしぼってる感がすばらしくて、冒頭からぐっとひきこまれて読んだ。全編通してとにかくテン…

『ローズウォーターさん、あなたに神のお恵みを』/カート・ヴォネガット・ジュニア

1960年代のアメリカ中西部。先祖からの莫大な遺産を相続した大富豪、エリオット・ローズウォーターが、ありとあらゆる貧しい人々に金をじゃんじゃん分け与えまくる物語。エリオットは博愛主義的な人物って言ったらいいのか、貧しい人たちに同情して、金銭的…

『ホワイト・ノイズ』/ドン・デリーロ

1985年に発表された、ドン・デリーロの出世作。ボードリヤールが言うところの、「ハイパーリアルとシミュレーションの段階」にあるアメリカをポストモダン風の皮肉で描いた、なんてまとめられそうな感じの小説だ。主人公のジャック・グラドニーは、アメリカ…

『ティンブクトゥ』/ポール・オースター

うーん、オースターの小説にしては少し物足りなかったかも。俺がオースターの作品でおもしろいとおもうのは、(『偶然の音楽』とか、『ムーン・パレス』みたいな)“肉体/精神的にぎりぎりの極限状態におかれた主人公の思考がスパークして、なんだかよくわか…

『また会う日まで』/ジョン・アーヴィング(その2)

アーヴィングの『また会う日まで』の主人公、ジャック・バーンズの幼い頃からの口癖に、「おー」というのがある。ジャックの「おー」は、周囲の世界に対する驚きや、自分の働きかけとはほとんど関係なく世界が動いていくことへの無力感みたいなものを表現し…

『ポスト・オフィス』/チャールズ・ブコウスキー

ブコウスキーの長編。ひたすら過酷なうえに退屈すぎる公務員の仕事と、酔っぱらいの日々がだらだらと描かれている。内容はだらだらなんだけど語り口は軽快で、テンポよく読み進めていける。ブコウスキーの小説って、なんかもう全部同じだよなー、って改めて…

『母なる夜』/カート・ヴォネガット・ジュニア

第二次大戦中、ドイツでプロパガンダ放送に従事していたアメリカ人の男の物語。彼はナチであると同時にアメリカのスパイでもあって、放送によって本国に情報を送り出してもいた。戦後、男はドイツにもアメリカにも居場所を失い、ニューヨークのグレニッチヴ…

『タイタンの妖女』/カート・ヴォネガット・ジュニア

これはすばらしい小説だった!!物語はかなりスラップスティックな感じで、むちゃくちゃな状況にひたすら翻弄されつづける人間の姿が皮肉っぽく描かれている。ただ、ヴォネガットはそれをくだらない、って言うんじゃなく、愛情を込めた視線で見つめているか…

『死をポケットに入れて』/チャールズ・ブコウスキー

ブコウスキーの日記。ただ、日記といっても2年半のうちで33日分しかないし、内容についても、ゆるゆると書かれた散文、って印象がある。俺は高校生の頃ブコウスキーがすっごくすきで、この本もたぶんその頃に買ったものだとおもう。当時は、自分のことをやた…

『野性の呼び声』/ジャック・ロンドン

ジョン・クラカワーの『荒野へ』で描かれているアラスカで餓死した青年、クリス・マッカンドレスは、幼いころからジャック・ロンドンの著作の愛読者だったという。そっかー、じゃあ、とおもってこの本を買ってきた。 ひとことでいって、動物ものの小説だ。飼…

「ヒッチハイク中の自動車事故」/デニス・ジョンソン

PAPER SKY(ペーパースカイ) no.23 (京都 (毎日ムック)作者:出版社/メーカー: 毎日新聞社発売日: 2007/10/25メディア: 大型本雑誌「PAPER SKY」に掲載されていた短編。これはすごかった!クレイジー!!デニス・ジョンソンの小説ってはじめて読んだのだけど(…

「オーギー・レンのクリスマス・ストーリー」/ポール・オースター

なんとかゼミの発表も切り抜け、あと1こレポートを書いたら冬休み。やったー。って書いてみても、べつにあんまり気分は盛り上がらない。なにしろ、俺はふだんから大して授業にも出てない、だめ大学生なのであって、休みだろうが休みじゃなかろうがあんまり日…

『また会う日まで』/ジョン・アーヴィング

アーヴィングの小説のテーマは、昔から(『ガープの世界』、以降)すごく一貫している。時間の流れを描くことだ。そのディケンズ的に長大な物語のなかで、登場人物たちは、時とともに何度も浮かび上がってくる、過去の傷や因縁と対峙しなくてはならない。世…

『僕が戦場で死んだら』/ティム・オブライエン

ベトナム戦争に従軍した経験を持つアメリカの作家、ティム・オブライエンが書くのは、いつも戦争についてだ。この処女作において語られる物語も、ベトナムでの経験がベースにあるものなのだろうけれど、とにかく印象に残るのは小説全体から立ちあがってくる…

『暗闇のスキャナー』/フィリップ・K・ディック

この小説にあるのは、人は現実という巨大なシステムのなかの歯車のひとつにすぎない、という冷徹なまでの視線だ。ドラッグを飲んでトリップすることで、瞬間、ハードな現実から抜け出すことはできる。だが、ドラッグをきめまくった挙句にいきつく先は、死か…