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本、映画、音楽の感想/レビューなど。

2013-06-01から1ヶ月間の記事一覧

『日はまた昇る』/アーネスト・ヘミングウェイ

ヘミングウェイの最初の長編。短いセンテンスを連ねた簡潔でリズミカルな文体、ぶっきらぼうな会話文、主人公の心情をあからさまにしないハードボイルドな態度、などといった彼の語りのスタイルは、今作の時点ですでに確立されていると言っていいだろう。 物…

『ヴェニスの商人』/ウィリアム・シェイクスピア

どうも最近だと、「シャイロックという人物の深みが…」とか、「シャイロックという人物の悲劇性が…」とか、「シャイロックという人物はユダヤ人のステレオタイプなどといったものではなく…」といったような、シャイロックの被抑圧っぷりに注目したシリアスめ…

『ソウル・キッチン』

ハンブルクの街外れにあるソウル・キッチンは、ビールと温めた冷凍食品が主力のレストラン。オーナーのジノス(アダム・ボウスドウコス)にとって、自力で倉庫を改装して少しずつ作り上げてきたソウル・キッチンは自分の分身と言ってもいいようなもののはず…

『ジェイン・エア』/シャーロット・ブロンテ

主人公、ジェインの魅力は、何といってもその意志力の強さだろう。文字通り自分の意志の力ひとつで人生と格闘し、運命を切り開いていくその姿は、とにかくかっこいいとしか言いようがない。ジェインの意志力は、物語冒頭では不幸な生い立ちからの脱却への志…

『イノセント・ガーデン』

イノセント・ガーデン (字幕版)発売日: 2013/11/26メディア: Prime Videoこの商品を含むブログを見る 日比谷TOHOシネマズシャンテにて。パク・チャヌク監督+ミア・ワシコウスカ+ニコール・キッドマン、って前情報以外は何も知らない状態で見に行ったのだけ…

『ダブル/ダブル』/マイケル・リチャードソン編

決して明かされてはならない秘密である「分身」。その存在が明らかにされると消滅してしまうか、むしろ本体の方を抹殺してしまう「分身」。本体からの独立や分離を、あるいは入れ替わりを望む「分身」。本体の陽性/陰性のみを抽出したかのような「分身」。そ…

『海に住む少女』/ジュール・シュペルヴィエル

海に住む少女 (光文社古典新訳文庫)作者: シュペルヴィエル,永田千奈出版社/メーカー: 光文社発売日: 2006/10/12メディア: 文庫購入: 4人 クリック: 38回この商品を含むブログ (82件) を見る これはひさびさの大当たりだった!シュペルヴィエル、こんなにも…

『回送電車』/堀江敏幸

回送電車作者:堀江 敏幸中央公論新社Amazon 「書店では置き場のない中途半端な内容で、海外文学評論の棚にあるかと思えば紀行文の棚に投げ入れられていたり、エッセイや詩集の棚の隅でに寄せられているかと思えば都市計画の棚に隠されていることもあるといっ…

『世界は分けてもわからない』/福岡伸一

世界は分けてもわからない (講談社現代新書)作者:福岡 伸一講談社Amazon 生物学者、福岡伸一の科学エッセイ。理系の新書にはちょっと不似合いなくらい、「本好き」な人っぽい言い回しが頻出するところが特徴的な一冊だった。福岡の文章は「いまいちこなれて…

『服は何故音楽を必要とするのか? 「ウォーキング・ミュージック」という存在しないジャンルに召還された音楽たちについての考察』/菊地成孔

雑誌『ファッション・ニュース』に掲載された、「ファッション・ショーに召還された音楽」を「ウォーキング・ミュージック」と仮称し、各メゾンの服とショーの演出との関係を分析しつつ、なぜ服飾には音楽が必要とされるのか?を探るアルケオロジックな。そ…