Show Your Hand!!

本、映画、音楽の感想/レビューなど。

2013-04-01から1ヶ月間の記事一覧

『蜘蛛女のキス』/マヌエル・プイグ

蜘蛛女のキス (集英社文庫)作者:マヌエル・プイグ集英社Amazon アルゼンチンの作家、マヌエル・プイグの有名作。ふたりの囚人がひとつ牢のなかに入れられている。ひとりは革命思想を抱いた政治犯の若者バレンティン、もうひとりは同性愛者の中年男、モリーナ…

「ネフスキイ大通り」/ニコライ・ワシーリエヴィチ・ゴーゴリ

狂人日記 他二篇 (岩波文庫 赤 605-1)作者: N.ゴーゴリ,横田瑞穂出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 1983/01/17メディア: 文庫購入: 1人 クリック: 22回この商品を含むブログ (35件) を見る 画家のピスカリョーフと中尉のピロゴーフが連れ立ってネフスキイ大…

『いちばんここに似合う人』/ミランダ・ジュライ

映画監督としても有名な、ミランダ・ジュライのデビュー作。16の短編が収められているが、どれをとってもアイデアはキュートで文体はポップ、しかしそこで描かれる心情というのはひりひりとするような痛みや孤独にまつわる切実な感情である、というところで…

『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』/村上春樹

今作の基本的なトーンというのは、いままでの村上の小説を読んできた読者にとってはおなじみのものだ。主人公の多崎つくるは、(例によって)内向的で自己完結的、他者と深く関わることのない生活を送っており、生きることに対して積極的な関心を持っていな…

『ラテンアメリカ十大小説』/木村榮一

スペイン語圏文学の翻訳と言えばまずこの人の名前がおもい浮かぶ、木村榮一によるラテンアメリカ文学の入門書。いわゆる「ラテンアメリカ文学ブーム」前後の作家たち10人とその代表作とを取り上げながら、各作品の内容からラテンアメリカ文学全体の傾向/特徴…

Wilco@SHIBUYA-AX

ウィルコを見たのは2年前のフジ(FUJI ROCK FESTIVAL ’11 (7/31) - Show Your Hand!!)以来だったけど、いやー、これは文句なしに素晴らしかった!!もう今年はこれ以上のライブは見られないんじゃないか…ってくらい、最初から最後まで超ハイクオリティな…

『ノアの羅針盤』/アン・タイラー

アン・タイラーの作品で描かれるのは、ごく平凡でまじめで、ちょっぴり野暮ったくて、家族との関係において何らかのトラブルやフラストレーションを溜め込んでいる、そんな登場人物たちの人生の一シーンである。プロットには概して大きな起伏はなく、いわゆ…

「九通の手紙からなる小説」/フョードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー

ドストエフスキー全集〈第1巻〉 (1963年)作者: 小沼文彦出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 1963メディア: ?この商品を含むブログを見る ピョートル・イワーヌイッチとイワン・ペトローヴィッチなるふたりの男による、計9通の往復書簡からなる短編。ピョート…

『ワールズ・エンド(世界の果て)』/ポール・セロー

米作家、ポール・セローの短編集。各短編はロンドン、コルシカ島、アフリカ、パリ、プエルト・リコなど、いずれもアメリカ人の主人公たちにとっての"異国"を舞台としている。"異国"のルールを理解/把握することのできない彼らは、漠然とした不安や寄る辺のな…

『ザ・マスター』

本作の見所はやはりこのふたりの濃厚すぎる演技ということになるだろう。彼らふたりが揃っているシーンはいずれも画面に異様な強度が宿っており、"何か決定的なことがここで起こっている"という、目が離せなくなるような気分にさせられるのだ(とはいえ、"本…

『査察官』/ニコライ・ワシーリエヴィチ・ゴーゴリ

『査察官』はゴーゴリの戯曲だ。今作も、この本に納められている他の2編と同様、落語調で訳されている。 舞台はロシアのとある田舎町。市長をはじめとする町の有力者たちは、ペテルブルクから査察官がお忍びでやって来るらしいとの情報を得て、ぴりぴりと過…

「鼻」/ニコライ・ワシーリエヴィチ・ゴーゴリ

鼻/外套/査察官 (光文社古典新訳文庫)作者: ゴーゴリ,浦雅春出版社/メーカー: 光文社発売日: 2006/11/09メディア: 文庫購入: 1人 クリック: 24回この商品を含むブログ (59件) を見る ある朝、床屋のイワン・ヤーコヴレヴィチがパンをナイフで切り分けていた…