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本、映画、音楽の感想/レビューなど。

2011-01-01から1年間の記事一覧

『あの夏の子供たち』

独立系映画会社のプロデューサーをしていた父親が、ある日突然自殺してしまう。父親を失った家族は、突然の出来事に深く傷つきながらも、やがて前を向いて少しずつ歩き続けていくのだった…!というプロット自体はまあかなりありがちなものなので、物語を印象…

『パリ20区、僕たちのクラス』

パリ20区、僕たちのクラス (字幕版)発売日: 2013/11/26メディア: Prime Videoこの商品を含むブログを見る早稲田松竹にて。パリの移民地区にある学校を舞台に、ある国語教師と24人の生徒との1年間を描いた作品。さまざまな人種の生徒が入り交じった学校の日…

『SOMEWHERE』

吉祥寺バウスシアターにて。これはよかった!展開らしい展開がほとんどない映画なのだけど、ある美意識がたしかに全編を貫いている感じが、この作品を挑戦的で素晴らしいものにしている。ハリウッド俳優のジョニー・マルコ(スティーヴン・ドーフ)とその娘…

『ポストモダンの共産主義――はじめは悲劇として、二度めは笑劇として』/スラヴォイ・ジジェク

昨年出た、ジジェクによる現代政治論。短く、比較的さらりと読めてしまう一冊だけど、そこはジジェク。歯切れよく好戦的な、いつものジジェク節が炸裂している。21世紀になって起きた、グローバル資本主義における2大ショック――9.11と金融恐慌――を経た、グロ…

『愛のゆくえ』/リチャード・ブローティガン

ちょっと変わった「図書館」に住み込みで働いている「私」を主人公にした、ブローティガンにしてはわりと長めの小説。全体に穏やかで、ゆったりとした時間の流れを感じさせる作品だけど、とくに物語前半の、「図書館」の描写が印象的だった。まるで世界の果…

湯川潮音@SHIBUYA-AX

2/13、渋谷AXにて。いやー、今回もすごくよかった。この後しばらくライブをお休みする、ってことで気合いが入っていたのか、曲数も多かったし、なんていうかいままでの集大成的な内容になっていたとおもう。ライブは2部構成になっていて、前半は湯川ひとりで…

「秋」/芥川龍之介

姉妹と従兄の三角関係を描いた短編。小説家になりたかった主人公の信子と、同じように文学を志す従兄の俊吉は互いに惹かれ合っていたはずだったが、どうやら妹の照子も俊吉のことが好きらしい、ってわかった途端に信子はあっさりと身を引いて他の男と結婚し…

「ねむい」/アントン・パーヴロヴィチ・チェーホフ

恐るべき短編。子供について描かれたチェーホフの作品のなかでは、おそらく最も衝撃的な物語だと言えるだろう。13歳の少女ワーリカは、住み込み奉公先の家で、掃除、洗濯、料理に子守と、ありとあらゆる家事をひとりでこなさなくてはならない。日中の仕事だ…

『キック・アス』

キック・アス (字幕版)発売日: 2013/12/10メディア: Prime Videoこの商品を含むブログ (5件) を見る横浜ブルク13にて。最近流行りの"ヒーローとはいったい何か?"という疑問に正面からぶつかっていくアメコミヒーロー映画。さすがあちこちで高評判なだけのこ…

『近松物語』

早稲田松竹にて。これはもう、文句なく素晴らしい映画!こんなに美しいモノクロの映像は初めて見たかも!とおもったくらいだった。主人公は、商家の奥方、おさんと奉公人の茂兵衛。このふたりが、ふとしたきっかけで不義密通の疑いをかけられてしまう。この…

『残菊物語』

早稲田松竹にて。溝口健二の超傑作として名高い本作だけど、うーん、俺にはまったく響いてこない作品だったな…。溝口映画の特徴と言われる長回しや、遠くから主人公たちをそっと見守るようなカメラ、モノクロながらも美しい画面など、たしかに見どころはたく…

『マン・オン・ザ・ムーン』

DVDで。米コメディアン、アンディ・カウフマンの生涯を取り扱った映画。ふしぎな印象のタイトルは、やはりアンディ・カウフマンをモチーフとしたR.E.M.の曲(超名曲!)から取られている。いわゆる伝記映画、と言っていいとおもうのだけれど、多くの謎に包ま…

「富籤」/アントン・パーヴロヴィチ・チェーホフ

宝くじの当選結果が載った新聞を前にして、もし当たっちゃったらどうしよう…とお互いに妄想を繰り広げる夫婦の話。ワンシチュエーションで、登場人物がいろいろと好き勝手にかんがえる、って描写で作品が成立しているところは、「かき」にも似ている(「かき…